壁の傷跡が語る沖縄戦の記憶―「旧海軍司令部壕」は必ず訪れるべき場所

壁の傷跡が語る沖縄戦の記憶―「旧海軍司令部壕」は必ず訪れるべき場所

「いろはとあさきの父」がお届けする沖縄一周旅行、4日目(2024年10月4日)。この日は、沖縄の美しい海や楽しい観光地だけでなく、この島が経験した深い歴史に触れるため、豊見城市にある「旧海軍司令部壕」を訪れました。時刻は10:00。ここは、単なる「観光地」という言葉では片付けられない、特別な場所です。

「観光」だけではない、旅の意義

沖縄の魅力は、その明るさや美しさだけではありません。太平洋戦争末期、壮絶な地上戦が繰り広げられた歴史があります。その記憶を継承する「戦跡」を訪れることは、沖縄を旅する者として、非常に重要な意味を持つと私は考えています。平和の尊さを学ぶための、最高の教材がここにはあります。

この記事で、「旧海軍司令部壕」の記憶をたどる

この記事では、私が実際に訪れた「旧海軍司令部壕」の様子をレポートします。壕内に残る生々しい痕跡、そして大田實司令官が残した最後の電文…。沖縄戦の悲劇を静かに、しかし力強く物語るこの場所について、詳しくお伝えします。「沖縄の歴史を学びたい」「平和について考えたい」という方、ぜひ読んでみてください。

ここは「観光地」ではない、記憶を継承する「戦跡」

「旧海軍司令部壕」は、太平洋戦争末期の沖縄戦において、大田實(おおたみのる)司令官率いる約4,000名の将兵が、最後の拠点として壮絶な最期を遂げた歴史の現場そのものです。

多くのレビューで「沖縄を訪れる日本人として、必ず足を運ぶべき場所」と語られるように、この場所への訪問は、美しい景色を見るのとは違う、一種の平和への巡礼としての意味を持っています。

地下30mへ…過去へと続く105段の階段

壕に入る手前には、まず資料館があります。「知識ゼロで入るのとでは、感じ方が全く違う」とのレビューにある通り、ここで当時の状況や大田司令官の人となりを学んでから入ることが非常に重要です。

資料館を抜けると、地下約30mに位置する壕本体へと続く、105段の螺旋階段が現れます。一歩一歩下りるごとに、ひんやりとした重い空気に包まれ、まさに過去へと下りていくような感覚に襲われます。

壕内は、コンクリートと湿った土の匂いが立ち込め、滴り落ちる水の音だけが響く静寂な空間。夏でも肌寒いほどの冷気があり、ここが「本物の戦跡」であることを五感で感じさせられます。

壁の傷跡が語る、生々しい記憶

全長約450mの壕の内部には、当時の記憶が生々しく刻まれています。

  • 手掘りの通路壁:壁一面に残るツルハシの跡が、機械のない時代に行われた過酷な突貫工事を物語っています。
  • 司令官室:この壕の核心部であり、大田司令官たちが自決を遂げた場所です。壁には、手榴弾による自決の際の無数の破片の跡が今も残っており、言葉を失うほどの衝撃を受けます。この傷跡こそが、何よりも雄弁に戦争の悲惨さを語りかけてきます。
  • 幕僚室・医療室など:暗く、狭く、湿った空間で、何千人もの人々が生活し、戦っていたとは信じがたい劣悪な環境であったことが偲ばれます。

見学ルートの最後に、再び地上へと続く階段を上ります。壕の暗闇から、沖縄の眩しい太陽の光の下へ戻った時の感覚、そして当たり前の日常や平和がいかに尊いものかを痛感する、忘れられない瞬間となりました。

魂の伝言 ― 大田實中将の最後の電文

資料館には、この場所を語る上で欠かせない、もう一つの核心が展示されています。それは、大田司令官が訣別の際に海軍次官へ送った最後の電文です。

軍の体面ではなく、戦闘に協力し、多大な犠牲を払った沖縄県民の功績を後世に伝えることを願ったその内容。「沖縄県民斯ク戦ヘリ…」から始まる一文は、多くの人の心を打ちます。

レビューでも「涙なしには読めなかった」「軍人としてではなく、一人の人間としての苦悩と誠実さが伝わる」と、多くの訪問者がこの電文に深い感銘を受けています。これこそが、私たちが沖縄戦から学ぶべきことなのかもしれません。

まとめ:沖縄の歴史と心を理解するために

「旧海軍司令部壕」は、楽しい場所ではありません。しかし、ここは沖縄の歴史と心を理解する上で、避けては通れない極めて重要な場所であることは明らかです。

美しい海や豊かな文化といった沖縄の「光」の部分だけでなく、戦争という深い「影」の部分にも触れることで、旅はより立体的で意義深いものになります。壁に残る無数の傷跡と、魂を込めて打たれた最後の電文は、70年以上の時を超えて、私たちに平和の尊さを静かに、しかし何よりも力強く語りかけてきました。

訪問には歩きやすい靴と、夏場でも薄手の羽織るものがあると安心です。また、急な階段があるため、足腰に不安のある方はご注意ください。

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